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「medium 霊媒探偵城塚翡翠」感想【ネタバレあり】

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「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の感想記事です。

ようやく読めた

ミステリって好きなんだけれど、時間が掛かるので中々手を出せないのです。
近年は特にラノベに嵌っていて、余計に読まなくなっています。
そんな訳で、ミステリ好きというには憚れるのですが、書店で盛大に詰まれてたりするとどうしても目が行ってしまうのです。
今作もそんな経緯で興味を抱きました。
「このミス」とか有名な賞を取れば、自然と注目を浴びますよね。
また、さらに売れる様にと大仰な惹句が並びます。

僕、こういう販売戦略、ミステリには合わないなとつくづく思う訳です。
誰しもが本を手にしたときに、少なからず驚きを求めているはずなのですよ。
特にミステリというジャンルは、その内容故に読者の殆どが驚かされることを期待している。
とはいえ、期待半分なところもあって。
「あらすじは面白そうだけれど、本当に驚かせてくれるのだろうか」と諦観に似た感情も同時に持っていることも多いんじゃなかろうか。
ミステリ沼に嵌ってる人ほどこのような傾向の心理状態を抱いている気がするのです。
このように読む前のハードルを高くし過ぎずいるからこそ、楽しめるというのも多分に含むジャンルであると考えております。

それなのに…です。
帯やポップなんかで煽りに煽るものだから、必然ハードルは上がりっぱなし。
「そんだけ言うんだから、当然驚かせてくれるんだろうな」
挑発に乗った読者は、上から目線で「どうだ、俺を驚かせてみろよ」と構えて読書に入ります。
当然にそんな状態で読めば、それこそその人にとって「これまでのベスト」級でない限り、「肩透かしを食らった」となります。

もしかしたら「通常の心理状態で読んでれば、十分に驚けた」のに、感情が昂ってハードルを上げられたが為に楽しめなくなったのかもしれません。
それはお互いにとって損ですよね。
特に今の時代、ネットで口コミを書けるので、短期的に得しても長期的には損しか無い気がします。
誰しもが冷静になって振り返れる訳ではありません。
読んだ直後の感情のままにレビューを書かれる方が殆ど。
「実際に読んだ人の生の声」を知ってから読んでみようと考える人たちは、二の足を踏む恐れがあります。
事実、僕もAmazonレビューを先に読んでたら、読んでなかったかもしれません。


話が大きく逸れましたね。
何が言いたいのか。
帯やポップの言葉は一旦横に置いて欲しいということ。

そして、僕が事前にネットで見た今作の注目ポイントが「当たり」だったことです。
実をいうと、Amazonで購入する前僕は今作のタイトルを失念しておりました。
なんとか「このミス」で国内1位だったことだけははっきりと覚えておりましたので、このキーワードでググってみたのです。
そうして辿り着いたのが、この記事。
batanq.net
記事内にレビュー動画が貼り付けてあったのですが、その動画のサムネの一言。
「すごいのは…犯人でもトリックでもない!」

この言葉に「変な方向性で期待感を抱かなかった」からこそ、僕は楽しめたのだと思っております。
(ちなみに、動画は再生してません。どこにネタバレが潜んでるか分からない動画を踏むほどネタバレ上等って訳じゃありません)
感想です。

事実、犯人はすぐに直感で分かった

どんでん返しがあると分かってれば、自ずと身構えるし、全てに疑惑を向けられます。
今作の最大の事件の犯人の名前が早々に読者に提示されれば、自然とここに罠が仕掛けられていると思う訳です。
他の人のレビューをちらちらと読むと、実際多くの方が同様に犯人の正体に辿り着いていたようです。

フーダニットはミステリの花形なのですから、ここに着目してると、そりゃ肩透かしを食らうもんですよ。
だって、大なり小なり大仰な宣伝文句のせいで仕掛けに気づけちゃったんですから。
なんだそれだけか…となる。

僕がそうならなかったのは、先にも書きましたように「気持ちのスイッチ」さんの記事を拝見していたお陰。
や、本当に助かりました。

さて、そうなると最大の驚きポイントはどこになるのだろうか。
色々と想像を巡らせながら読み進めていきました。
けれど、これというものが思いつきません。

唯一小さな、本当に小さなひっかかりを覚えていた程度でした。

本作は、4つの事件で構成されています。
連作短編のような形式で、1章につき1つの事件の顛末が語られていくという方式。
ちゃんと推理があって、犯人が特定され、事件が解決していくのだけれど、どこか喉に骨が刺さったような奇妙な感覚に囚われていたのです。
もう少し具体的に言えば、「伏線を回収しきってなくない?」という引っかかり。
勿論決定的な疑問とまでは言えませんでした。
推理力の無い僕は、論理立てて説明できません。
ただただ漠然と「これ伏線じゃないの?」と感じていたものが回収されてないと感じていただけなので、そのまま事件が解決しても具体性を持って違和感とまではならなかったのです。
伏線だと思い込んでいただけで、実際は伏線でも何でもない。
もしくは、レッド・ヘリングだったのだろう。
そんな解釈で、先を読み進めておりました。


結果としては、この引っ掛かりが最後の最後に解消されたわけです。
いや~、そうかそうか。
この展開は想像だにしてませんでした。

そして、一度解決した事件を全く異なる角度から論理的に解き明かしていくという手法には、「こりゃ、このミス1位だわ」と納得。
本格志向の緩めのミステリかと思いきや、ロジックでぎっちぎちに固められたガチガチの本格だったのだから、ウケは良い訳ですよ。


個人的にはトリックミステリが大好きで、そういった方向性の本格が好物なのですけれど、これはこれでという感じ。
純粋にロジックに浸れる一作で、非常に楽しめました。
やはり過剰な宣伝に乗ってしまうと興が削がれちゃう気がしますので、そこにだけ気を付けて読んで頂きたいかな…。

終わりに

若い女性ばかりが殺されるというラノベ好きオタクには、しんどい面もあり、読んでいて辛い気持ちになったりもしたのですけれども。
最後の最後まで読んで、読んで良かったと思える作品でした。